新しい生活が始まった。
彼氏の部屋にお邪魔する形になり、大学院の寮を出たあとも住む場所が一旦確保された。
ロンドンは家賃が驚くほど高いのでありがたい。
彼の家はいつもひんやりとしている。
暖房が欲しいくらいで、今が8月であることを忘れそうになる。
イギリスは夏が二週間ほどしかないという噂は本当か。
修士論文を進めたいし、夕食の用意を済ませてバイトから帰ってくる彼を待ちたい。
きっと彼の母ともうまくやれる、新しい仕事もうまくいく、という根拠のない期待と、
通勤時間が長いな、などの現実的な不安が入り混じる。
さらに、昨日お別れした、一年間お世話になった寮の友人が恋しくて、帰りたい気持ちもよぎる。
感情の行き場がない。私は一人で思案する時間が好きなのだが、同棲するとその時間が減ってしまうのだろう。
彼とはこのあとずっと一緒なのだろうか。
私にそんな覚悟あるんだろうか。彼が大好きなことと、今後の人生を彼と過ごしていく覚悟を持つことは、別物だと思う。
…それらの不安を、熱いお茶を啜って一掃する。昨日アジアンスーパーで緑茶を見つけ、日本で買う値段の3倍するのに買ってしまった。
不安の代わりに、何の当てもなかった一ヶ月前からしたら大きく前進している、と何度も感じたありがたさを改めてなぞる。
